2014/12/27

昔話

身勝手病を患ったオジイが
育てた三菱豚に気違いにつける薬をのませ
オジイが軽蔑の熱視線で焼き殺されて
しばらく骸を晒されたあと
豚どもは痛くも痒くもないのが災いして
総出で崖に突っ込んで行ったと
昼にオバアに聞かされた
死んでも死にきれん死ぬのが怖い
オバアももうじき今か今かと
待ちくたびれて私もたそがれた

2014/12/18

絶望

絶望という名の心地よい布団にくるまって
遠い異国の夢を見る

おやすみ おやすみ 目を閉じていなさい
遠いところにお逃げなさい

選挙

無関心は恐るべき力だ
意味のあることも無意味化して伸していく
それがわかると
無関心も恐るるに足りない
さりとて 
私の身の回りの無関心を無害化できても
無自覚に社会を呑み込み破壊し尽くす
無関心の威力を

あいつはわかっているから
嫌な奴なんだ

2014/07/25

武器商人

くっさい くっさい
三菱ウンコは
血で赤い

不要なニーズに応え続けて

危険なウンコの切っ先で
寄るな 触るな
鼻つまみ

2014/06/27

ある日の天啓

三菱の社章みたいなウンコは
腸壁を傷つける恐れがある

「ふつう」の人間が邪悪過ぎて
ブラック・メタルの邪悪も掻き消されてしまう

あヽ乙女よ
思慮深げに見えて
何も考えていないのが
オジさんってもんだ

2014/05/28

物語を

人間には物語が要る
物語が人間を作る
人間は物語を欲している
物語の否定は人間の全否定
万物の全否定
そしてそれは
虚無への憧憬
罪も嘘も苦しみも滅したい
完全無欠の「善意」が
物語を否定し 物語を
「情報」という言葉に置き換える
物語を持たない
物語を欲する人々を
巻き込み その人々を
ただの「情報」へと
「変換」して消し去る

ならば さあ
「情報」から抜け出て
物語を紡ごうではないか

2014/05/26

日課

身体を折りたたみ
空気を抜き
真空になる

目を閉じて
静かに
自分を構成する要素を丁寧に感じとる

私は
物語によって構成されている

2014/03/27

大合唱

狂うことは
歌うことに似ている

社会は
狂っていないこと
もしくは上手に狂うことを要請してくる

自分の声を知らずに
巧く歌っていると信じきって
「自分は狂っていない 狂っているのはお前だ」
と言う大勢の音痴が
寄り添って

大きく音程をはずした合唱団になる

指揮者の腕が良ければ
すばらしいヘタウマの合唱でも

指揮者が狂っているので
あれだ
選曲もヘンだ

2014/03/19

おやすみ

法も制度も
剥き出しの命も
破り打ち砕かれ
もう楯になり得ない

同胞がうざい
仲間が嫌い
こんな奴らと似ている
俺が嫌い
勝手に愛し合ってろ
全部脱ぎ捨てて
お前らなんか
忘れちまうよ

生き抜くために
楯なしで戦い抜ける戦略を

夢みたいなことを
夢のようなことを
夢に見るように
夢に会えるように
おやすみ

2014/03/18

宿題

他人に言われてやる仕事は腹が減るし、眠くなる。
自分の内発的な意思でやる仕事は、腹が減らないし、眠気もない。
何より、やり遂げた充実感が違う。
結局、他人に言われてやる仕事は、経費も、効率も悪いし、人を幸せにしない。
それでも、不幸にしがみつく理由を、ノートに箇条書きにする。

2014/03/15

パンとサーカス

ローマの王様は
ため息をついて言いました

奴隷にパンとサーカスを与えたばかりに
多くの奴隷の子らが
パン屋とサーカス芸人になりたがる

2014/03/12

夢うつつ

誰も彼も夢うつつ

隙だらけの現実に染み込んだ夢が
やがて現実を破壊する

発酵しなかった夢が
見る間に現実を腐らせる

こんなはずじゃ
こんなはずじゃなかった

なのに現実はこうだ
真実はこうだと
夢を押し売り
化かしあっているのに

夢が無い
そんなバカな

目を覚ませ
あんたの節穴の目の前の
この残骸は一体「なぜ」だ

いのちる

自分を殺してまで
他人を生かすとすれば
それ相応の
意味なり理由がないと
はした金では
他人は動かない
いや
動かしてはいかん
はした金くらいで
逆に命を粗末にするなと
私なら言ってやる
私のために死んでくれるな、と
せめて死ぬなら
あなた自身を生きてからにしてくれ

2014/03/02

道具の歌

私は 道具
この社会は ずっと
私の使い方を知らない

私は 楽器
この社会は まだ
私の奏でかたを知らない

私は 文字
誰が 私の意味を
知っているというのか

私は 兵器
扱いがわからないで
これを生かす術など 笑止

私は 便所
「使えません」と
ドアに張り紙を貼ってある

私は ドア
私は 衣服
私は 引き出し

黙っていれば 誰も皆
好きな引き出しをこじ開けて
勝手なものを引き出していく

何ものにもなれない あなたは
可能性か 虚無か

麻痺

痛みがあるならまだしも、麻痺しているんだから、どうしようもない。
そして更に、痛みのある人びとは麻痺してしまいたいんだから。

2014/02/26

冗談指南

徹頭徹尾
冗談は冗談

こいつは笑わしてやらない
おまえは笑ってもいい
そんな冗談のためになら
私はこの命をかけてもいい

下手な冗談はよせ
ケツに「冗談」をつければ
冗談になるわけじゃない

冗談にならないと思えば
最初から言うな

「おまえは頭がいいな」

これが冗談だってわかるか?

2014/02/24

逃亡者

情けを世に乞え
そして泣け

仕事が終われば
人間を全力で忘れよ

あなただけじゃない
そんなもんだ

友だちがいないってステキなことよ

2014/02/22

永久運動

汚れたことばを洗って干して
使い回す永久運動

クサいのは生乾き
湿っぽくていやになる

「なぜ?」「なんで?」「どうして?」
ひとつ覚えがいつまでも問う

みんな狂ってる
あたしも狂わなきゃ

「なぜ?」「なんで?」「どうして?」
そんなの訊くのがばからしい

何のためにやっているのか
それが辛い

何のためだかわかって
やる必要がないとわかって
なのにだから

耐えられない

はじめからわかっていたんだ
やらなくてもいいって

それでもそれしかなくって
しかたなくやっているんだから

壊れるためにやっているんだから

捨てちまうか
いやまてよ

何かいいもの手に入れると
他のいいもの取られちまう

2014/02/17

なりそこないの歌

詩人のなりそこない
役者のなりそこない
歌手のなりそこない
舞踏家のなりそこない
画家のなりそこない
作家のなりそこない
表現者のなりそこない

王様のなりそこない
学者のなりそこない
お姫さまのなりそこない

父親のなりそこない
母親のなりそこない
男のなりそこない
女のなりそこない
兵士、娼婦、奴隷、病人

金持ちのなりそこない
坊主のなりそこない
神のなりそこない

命のとりぞこない
生きぞこない
死にぞこない
生まれぞこない
現実社会
人間社会

2014/02/14

花嫁の決意

どこか
だれも知らないところに
行きたいわ
あなたは知ってる
あなたの瞳の
その海へ
本物の青色の
あなたが背負った
その景色
あなたがけがれない
その理由
私があなたに
ついてきた理由
あなたを育んだ
そこにいつか
私も行けるから
決めたのよ
重い荷物は軽くしたわ
連れてって
ついていくわ

2014/02/02

2014年2月2日

うちのダンナは
私が「ロシアが好きだ」と言えば
誕生日にロシアケーキを買ってくる
「ロシアのくまプーがカワイイ」と言えば
ロシアのくまプーの画を描いてくれる

「リア充は死ね」と呪われるかな
うちら貧乏で低学歴でそれはないだろう

ところでロシアのくまプーは詩人らしい

2014/01/08

機械工は言う

「シンプルな道具は修理が利く
 複雑な世界に足をとられた複雑な人間に
 修理が利くような生易しさはない
 人間も道具ならばシンプルな方がいい
 人間は道具ではないとほざくならなお
 シンプルな道具を見習うべきだろう」

優れた者

手を汚せ 手を洗え 手を汚せ 手を洗え
あいつらは手を洗う
そんなに汚い手をして
汚れてもいない手をなぜ洗う

あれを軽蔑しながらあれにエサをやり
あれを怪物に育てたあいつら

勝手に”優れた者”になればいい
優れたあいつらに手助けはいらない

2014/01/01

ヨブに会う

暗闇のさびれたヨブの門をくぐり
暗い回廊の奥へと導かれるまま
やがて視界が広がり
澄みきった楽園で
私は丁寧にもてなされた

なんてことのないめずらしいお茶
大したことのない美味しい茶菓子

楽しげなヨブに
難攻不落の城の築き方
財宝を決して略奪させない方法
そこここに満ちた感謝をかたちにかえる方法
諸々の秀逸な策や術をこっそり教わり

私は幸せ
私は 私の幸せがわかる人に出会うだろう

今しばし
もう二度と出会うことのない人々に
さよならをする時間が残されている