2013/12/23

聖なる夜に

クリスマスも賽の河原で石を積む
鬼は休日聖なる夜と大はしゃぎ
サンタ来て積んだ石をば崩して去る
本名は「オーディン」と名乗るサンタクロース
八つ足のトナカイ繰りて来る死神
オーディンが目玉くり抜き吾に与ふ

2013/11/19

死神は言う

「餓死すること自体はそれほど怖くない
落ち着いて餓死できる環境でないことが怖いだけ

墓があるからといって成仏できるものでもない
逆に墓のせいでおちおち成仏もできなくなる

冒涜される死者こそがいかにすべきかを知っている
畏れ敬え慎めとはいかなることか

知りもしないで博識によがり
彼から学ぶ気のない者の敵がいかに膨大か

まさに憐れとはこのことだが
しかし私には憐れみなど欠片ほども無いのだ」

2013/11/17

死神

カタコンベに至る通路を夢中で掘り進んでいる

人間は「ひとり、ふたり…」と数えるのに
シャレコウベは「ひとつ、ふたつ…」と数える
なぜか

2013/10/16

台風26号

肛門をかたどったような議員バッヂがよく似合う
ボンボンのポスターが
街の景観も私の心も汚すなんて
誰もなんとも思っていやしない
私の傷つきやすさは置いてきぼりだ
季節外れの台風一過に中秋のすきま風

あの釣師

"Before I am old
I shall have written him one "

「老いぼれる前に
 この男のために一篇の詩を書こう」

と百年前に
イエイツが内的視覚で出会った釣師こそ
誰あろう
私のダンナであった
 

2013/10/14

デフォルトを待ちながら

まだ動けない
息の根が止まるのを見届けるまでは
押し合いへし合い散り散り崩れゆくのを
ゴドーを待つように
節度を保てなかった不健康な時代を
神さんが親指でひねり潰していくのを
眺めているだけ

あの人の叫びは残るだろうか
その向こうの叫びは沈黙するのか
右に倒れるのか左に倒れるのか
散らばって死んだフリのあと
また集まって悪さをするんだろう
とどめを刺すのは誰だ
見極めるまでは動けない

2013/10/10

2013年10月

異形な人の時代、
妖怪の時代がくる、
逃れようがない、
これを勇気を持って肯定すべきかもしれない。

それであっても、
軸は見失わない。
私は、
私がここに在ることを試されている。

時代よ、来やがれ。
剣は冴え、
痒ければ掻くのごときに、隙あらば斬る。

2013/09/25

恋がしたい

恋がしたい。
愛に満たされていても、恋がしたい。
浮気はしないが、恋はしたい。
ダンナ以上に私を愛せる人に出会うことなど無いと知っていても、
恋がしたい。

愛と恋は、まったく別物だ。
恋は、自分の伸びしろに利用するためのもの。
要するに、トキメキたいんだ。
相手はミジンコでもかまわない。

2013/08/17

やさしさの技法

あるがままではいられない嘘つきたちを
目を合わせることなく
腫れ物のように
病人のように
赤子のように扱うこと

どうせわからないんだ
くれてやるのはまがいもので充分だ

2013/08/12

孫からの手紙

じいちゃん ばあちゃん
まじめに生きる気がしなくなるような
ぜつ望的な世の中を ありがとう
大ぜい ころして
じぶんだけが生き残れるように
がんばります。

2013/07/30

死者の声なき声に耳を傾ける

「きちんと絶望したい。
 気休めはよしてくれ。
 元気づけようなんて、
 おまえの汚れた元気はいらない。
 こう見えてもグレードアップしている最中なんだ。」

2013/07/19

死者の歌

あなたが自分らしさを生きるために
私が自分らしさを犠牲にしている
私は死者だ
死は安らぎだ
誰も知らないところで報いてくださる神を
私は愛している

2013/07/17

骨の歌

「自分探し」とは
骨を埋める場所を探すこと
「欲望」とは
埋めた骨の快適さを求めること
今ここに骨を埋めると腹を括れるか
骨にとって心地良いか
誰が決めたか なぜ ここに埋まってはいけないと

2013/07/07

七対子

ときには なきたいこともある
でも なくのはいやだから 字牌は先に捨てるの
たとえ負けても 素人と罵られても
潔く捨てたことを 決して悔やみはしない
だけど 今日だけは 心から悲しませてね
さよなら さよなら 大三元

2013/06/19

ダンナ選び

もしも あなたがメアリーなら
コリンとディコンのどっちのお嫁さんになりたい?

私はディコンを選んだ

メアリーは バカだ
 

2013/06/09

ぬりかべの恋愛観

他人の恋愛には、あまり興味が沸かない。
ホレたハレた歌は好きじゃない。
他人がどんな愛を感じていようが、私には関係ない。
自分の純愛を他人の思いで汚すのは、もったいない。

なのに、巷に愛の歌は溢れかえり、景色を汚す。
汚れた思いを綺麗に見せようと、見よう見真似の必死さで、
虚ろになった、まるごと暴力となった、景色の中に立って、

何も残らない、傷ひとつ、私の中にとどまることがない。
皆、何に揺さぶられるのだろう。

2013/06/07

でくのぼう

自我が肥大し過ぎて巨人になった

見下ろすと 地平に
幾億の子どもたちがお遊戯をしている

少数の子どもがこの指とまれをしてはじめたゲームに
より多くの子どもが群がっている

この指とまれをした子たちは
小さな台の上に立って

他の大勢の群がる子は

鬼の役にまわった子が勝てるらしい
組を組んで一人を鬼に押し上げたり
鬼から引きずり降ろしたり

ルールのわからない子は

群れに入ろうとしたり
群れから外れたり

私も子どもになって
あのゲームに加わろうとしたが

いかんせん
私はでくのぼうの巨人なので
小さな子どもに合わせられない

邪魔にならぬよう
ただ見ていたが
もうすでに見飽きたので

「負け組で底辺で低能で社会に居場所が無いから このゲーム 降ります」
と 子どもの言葉でことわって
ほかの遊びを見てみることにした

長いものに巻かれるとき
その時長い方を選ぶか
長い目で見て長そうな方を選ぶか
どちらが長いのかをはかりかねても
自分が「長い」と思う方で
大方間違いない

あの子どもたちから教わった

2013/06/06

妖女伝

死の中に希望を見出した時
「私は老いた」と悟った
十五歳

その乙女が
人の形の化け物であったと気づいた時
四十歳

人に出会い
人の吐き出す魂を喰らい
永遠の血肉を完成させ続ける

「私は老いた」
あの時のあれが真実であると
枯れゆく途上の今
疑う余地がない

2013/06/01

崖の下で

上にいる人が梯子を外して「昇ってこい」と言う
梯子を降ろそうとしている人の梯子を壊して
「昇ってこい」 と

そもそも上に行く必要があっただろうか

何でもあるように見えて
あそこには何もない

それで私は 昇るまい と決めたのだ

2013/05/22

さかさまごとの宗教

あなたがどうすべきか思い悩んでも
目指す社会はそうではない
そのため あなたは
目の前の困り果てている人たちを
心に留めおかずに済む

あなたが生かしたい気持ちでいたとしても
社会の仕組みがそうではない
おかげで あなたは
目の前の人の死にも
心を苛まれずに済む

感謝しなさい
社会の恩恵に感謝しなさい

2013/05/01

なぞなぞ

1%の人が99%の人を取り囲むとき

1%の人を取り囲んでいるのは

何が何%か?

2013/04/26

東風吹かば

青空を映して美しく見えるドブ川

誰も飛び込んで水浴びをしようとは思わない

それでも名を馳せ語り継がれるドブ川

ドブ川に沿ってソメイヨシノが咲き

はしゃぐ人が増え

春はたそがれ

梅の花は鳴りを潜めた

2013/04/17

DV国のとある一般家庭

"嘘吐き"という姓の
"嫉妬"と"軽蔑"という名のきょうだい
見栄張りを生業する親に服を着せられ
目糞鼻糞と罵りあい

親に可愛がられる"軽蔑"に
家から閉め出される"嫉妬"
これではいかんと親は"嫉妬"を家に入れ
目糞鼻糞と罵りあい

耐えかねて家出する"軽蔑"を
体裁繕う親が連れ戻し
また罵りあうのを眺める
末っ子の"ズル"

上のふたりは"ズル"が羨ましくて
こいつをやり込め苛め抜いても
親のほうでは知らぬ存ぜぬ
見栄を張るので忙しい

床の間に家宝の"頽廃"
夕飯は"ホラ吹き大根"と"嫌味の蒸し返し焼き"

親は子どもを愛している
子どもは親を愛しているとか

2013/04/07

鍵をかけること

心の扉は大抵半開きにしてあるが
一番奥の容れ物には常に鍵をかけてある

急な坂道を誰よりも早く転がり落ちた
あの子の家の扉は鍵が無く
風が吹けば 開いたり 閉じたり
だらしない玄関口から中に入ると
真っ暗がりの中の一番奥の容れ物は
鍵も無く わずかなガラクタが入っているだけ

このガラクタが大事なものか
気まぐれに大事にして 取っちゃ捨て
またわけのわからないものを貰って
気まぐれに大事にして また捨て
ガラクタの素性を自慢げに語り
自慢になっていないことに気づいて
また 捨て

あの子に云わなきゃいけない まず
容れ物に鍵をかけること
そうすりゃいずれ中身もガラクタじゃなくなるだろう

2013/04/06

人の間に

寄り添いながら生きている
人の間に軽蔑がある

軽蔑しながら付き合い続ける
軽蔑されながら付き合いにあわせる
軽蔑に気づかず軽蔑される

軽蔑されるようなことをするから軽蔑されると
軽蔑されるようなことをのたまい

軽蔑する
相容れなくする

軽蔑に慣れる
絆は断たれる

軽蔑 軽蔑 軽蔑…

2013/03/02

市井の人

天井桟敷ですよ。
まさに、ろくに金も払わず、
天井桟敷から茶番劇を観ておりますよ。
どこか外国の戦場で犠牲になった、
罪の無い市民の無残な亡骸。
あれこそ、私の姿ですよ。
ゆくゆく私も、ああなることでしょう。
その時まで、ここでこうしておりますよ。
演目がこれしかないのが、癪に障りますがね。

2013/02/15

希望

人にも未来にも 外に向かって希望を託さない

内に向け 小さな成果の
ひとつひとつに「希望」を刻印して
積み重ねて繋いでいく

そして人知れず静かに 喜んでいよう

2013/02/14

節約術

荒んだ心がいちばん金を喰う。
節約の基礎は、まず「心を荒ませない」こと。
そしてそれは、豊かさの基礎。

2013/02/13

二月

足が吊るほどの寒さ
ひるむほどの向かい風

耐え難い軽薄さ
ダモイはまだか
私はやっぱり人間嫌い

冬眠を
冬眠する権利を

春が来るまで眠りたい
森のいきもののように眠っていたい

2013/02/12

重荷

自分の人生など
どこにもないから
他人の人生を生きようとする人が

さらに他人の人生を奪いながら
とりあえず生き
他人の人生をさらに
他人に与えようとするが

他人の人生は
重すぎて受けとめられない
これに尽きる

自分の人生を生きる機会もなく
殺されるならば

長生きはしたくない
死に損なうな

2013/02/11

Leave me alone

ありがたい訓示も道徳もマザーテレサの言葉も、
すべてわかった上で、
何もかもがバカバカしくなる、
もう死のうが何だろうがどうでよくなる、
自暴自棄の瞬間は、
死が一番の癒しになる。

砕け散った希望、
健気な切なるムダな努力、
「生きることはすばらしい」という嘘つきどもとも、
全てから離れ、逃れ、去りたくて、
誰にも邪魔されずに、
思う存分死に望みを託すから、

そっとしておいて。

私は、
あなたの望むようなものにはなれない、
ごめんなさい。

2013/02/08

死の選択

「迎春」の字を見て「ゲイの売春」と思うらしいうちのダンナが、
もしも脳死状態で尊厳死の選択を私がしなければならない場合、
私が責任を持って、生命維持の電源のスイッチをOFFにする、
とダンナに伝えると、「よし」とのこと。
愛した者の手によって命を終えさせる、というひとつの死の選択。

2013/02/07

処世

保身に命懸け、反原発に命懸け、
言論に命懸け、上からの命令に命懸け、
子育てに命懸け、体裁を整えるのに命懸け、
立っているのに命懸け、用を足すのに命懸け。

誰も彼も命懸け。
命を燃やし尽くして死ぬのは、みんなおなじ。

あなたとわたしの間の歳月の隔りが、
あなたとわたし、お互い命を奪い合うように、仕向けるから、

命を見せびらかしていると、あなたに命を狙われる。

命を守れ、命よ育て。
わたしの命の在り処は、あなたには内緒。

2013/02/06

親切

親切心はつけ入られるもの。
歪みは、歪みのままにして、

「歪んだメディア情報」は「正して」やらない。

突き詰めればそれこそが親切だ。

2013/02/05

ニュース

「今騙されている人たちが、騙されていたと気づくまで、あと五年はかかるでしょう」

2013/02/04

確信

私の至福と平安は
あさっての方向にある と
今日 確信した

2013/02/01

さらば祖国よ

あやしい
愛した祖国が失われゆくことは悲しいが
そもそも私は祖国を愛していたのか

見える
私が向かうべき世界が 

どうでもいい
あそこへ向かう道中の
今を取り囲むこの雑多なことどもなど

信じない
目に見えるものは
より深くで確かなことを感じとっているから

やめよう
労力の浪費は
行く手に顔を向けて

騙されない
私はもう

祖国をこぼれ落ちた私の脇を
すり抜けて転げ落ちてゆく
より深い絶望へと

祖国よ
酩酊した亡国よ
さらば

2013/01/19

桜の園を後にして

犠牲は、新たな教訓を生みだすために、つねに払われつづける
犠牲が何であるのかを、大勢がまだ知らず
犠牲を生まずに教訓を得る術も、まだ知られていない
犠牲を忘れて果実のみを得るが
私が犠牲にしたものは何か
私は何の犠牲になるのか

零下三度で満開の美しい花を咲かせて愛される、あの不自然な桜

“…さ、一緒に行きましょうよ。
…わたしたち、新しい庭を作りましょう、これよりずっと立派なのをね。”


2013/01/15

乙女の夢

乙女の夢は
白馬に乗った王子様のキスで目覚めること以上に
寂しい僧院に篭ることと
若くして美しいまま逝くこと以上に
魔法が使えるようになることである

2013/01/02

抱負

生きることで味わう
すべてを受け容れかねる
この違和感を
日々たしかに味わう心がけを